3年も前のことですっかり忘れていた、
花カイドウの一件。
活け込み用に枝モノを探していて、見つけた可愛らしい花。
軸になっている太い枝には苔が付いていた。
そのコントラストが素晴らしく、もちろん花の様子も可愛らしく、
多少高価ではあったけれど、勉強のためも含め購入。
それを、春らしく活ける、そんな段取り。
と、アシスタントI君、あろうことか、
気付いたら、太い枝からつぼみのついた小枝を全部切り落としていた。
小分けしたほうが生けやすい、そう思ったんだろう。
気持ちは分からないでもない、けれど。
私はショックで倒れそうになった。
その枝は、一体何年かけてそこまで太くなり、たくさんのつぼみを付け、
そして苔までたくわえて。
本来なら、
根を張った土の上で悠々と花を咲かせ、実をむすび、
翌年にもまた、花を咲かせたに違いない。
それが切られて流通して、目の前にある。
自分の手とハサミが、その花の最後の咲き姿を決めることになる。
その責任の重さと、その与えられた使命に対する喜び。
と、そんなようなことを、私はアシスタントI君に叱りつつ話したらしい。
そんな風に話したことをすっかり忘れていたのだけれど、
I君、それを友達に話したところ、その友達は心打たれて泣いたらしい。
花の仕事は、キレイなだけじゃなくて、命を扱っているんだね、と。
花の最後を決める、その責任、
それを特に感じるのは、桜。
どんどん切っても育つというタイプの花材ではない、
というより、下手をすると切ったところから痛んでしまう、デリケートな素材。
だからこそ、3月に入って市場にズラリと並ぶ膨大な桜の枝を見るにつけ、
どこからやってきて、そして、こんなに切ってしまって大丈夫なのかなと。
その謎が、少し解明。
こんな風に、アツい思いが込められて、桜はこの手に届くのかと。
花宇の清順さんがちょうど今、様々な桜と格闘中。
そして今朝、幸運にも現物を見てきました。
想像以上に巨大!
そして、様々な種類の桜たちも。
温室の中は、桜の、つぼみの、ふつふつと滾(たぎ)るようなパワーで溢れていました。
どの桜も、咲いたところが見てみたい!
本格的に生けられた桜を目にするのは、おそらく来月以降となりますが、
今度見かけたら、
その桜にも、生産者さん、プラントハンターさん、そして活ける役割の人、
様々な手や思いを介して、咲いた花ということも、
少し頭の隅に置いてみていただけると、より味わい深いものになるかもしれません。
ホント、どこでハサミを入れるか、頭を悩ませますが、、、。
なんとも華やかで楽しい花です。
こちらは寒い玄関を明るく、とのご依頼。
掛け軸も木瓜?なのかな。
今週はこの木瓜や特選の椿を使った和花のレッスン「なでしこ講座」、
週末もお楽しみに。